各論

開発法

対象不動産(更地)の面積が

近隣地域の標準的な土地の面積に比べて

大きい場合等において、

開発事業者の投資採算性の観点から

試算価格を求める手法である。

①一体利用することが合理的と認められるときは

価格時点において、

当該更地に最有効使用の建物が

建築されることを想定し、

販売総額から、

通常の建物建築費相当額及び

発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を

控除して得た価格。

②分割利用することが合理的と認められるときは

価格時点において、

当該更地を区画割して、

標準的な宅地とすることを想定し、

販売総額から、

通常の造成費相当額及び

発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を

控除して得た価格。

開発法によって求める価格

マンション等又は細区分した宅地の販売総額を

価格時点に割り戻した額から、

建物の建築費相当額及び

発注者が直接負担すべき通常の付帯費用又は

土地の造成費及び

発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を

価格時点に割り戻した額を

それぞれ控除して試算価格を求めるものとする。

 

開発法と一般的要因

開発法の適用においては、

販売総額や建築費・造成費

発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を、

投下資本収益率で割り引く必要がある.

 

 

 

 
 

 

借地権

借地権とは、

借地借家法(廃止前借地法含む)に基づく

借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。

借地権の価格とは

借地借家法に基づき

②土地を使用収益することにより

③借地人に帰属する経済的利益(一時金の授受に基づくものを含む) 

を貨幣額で表示したもの。

 

借地人に帰属する経済的利益とは

土地を使用収益することによる広範な諸利益を基礎とするものであるが、

土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地人の安定的利益

これは、

借地借家法等の規定により、最低存続期間が法定されている。

②契約期間が満了しても、地主に更新拒絶の正当事由がない限り契約更新される。

③第三者への譲渡が可能である。等の法的側面から生ずる利益である。

 

「借り得」

①借地権の付着している宅地の経済価値に即応した適正な賃料と、

②実際支払賃料との乖離(賃料差額)及び、

③その乖離の持続する期間を基礎に成り立つ経済的利益の現在価値のうち、

④慣行的に取引の対象となっている部分

これは、

①権利金等の一時金の授受や地代の粘着性等により、

②価格時点の正常賃料水準より実際実質賃料が低廉な場合、

 借地人にとって当該差額がいわば

「借り得」となっている等の

経済的側面から生ずる利益である。

 

借地権の鑑定評価額

借地権取引慣行の成熟の程度の高い地域に存する借地権の鑑定評価額は、

①借地権及び借地権を含む複合不動産の取引事例に基づく比準価格並びに、

②土地残余法による収益価格

を関連付けて得た価格を標準とし、 

③当該借地権の設定契約に基づく賃料差額のうち、 

取引の対象となっている部分を

還元して得た価格(賃料差額還元法)

④借地権取引が慣行として成熟している場合における、

当該地域の借地権割合により求めた価格(借地権割合法)

③④を比較考量して決定する。

 

借地権割合法

①地域の標準的な借地権価格の更地価格に対する割合から標準的な借地権割合を求め、

②これに対象借地権の個別性を加味して対象借地権の借地権割合を求める。

借地権と一時金

宅地の賃貸借契約に関連して、

借地人から賃貸人へ支払われる一時金には、

一般に、

①預り金的性格を有し、通常、保証金と呼ばれているもの、

②賃料の前払い的性格を有し、又は借地権の設定の対価とみなされ、

通常、権利金と呼ばれているもの、

③その他借地権の譲渡等の承諾を得るための一時金  

に分類することが出来る。

これらのほか、定期借地権に係る賃貸借契約等においては、賃料の前払的性格を有し、通常、前払地代と呼ばれているものがある。
 

 

 

①これらの一時金が借地権価格を構成するか否かは、

②その名称の如何を問わず、

③一時金の性格、

④社会的慣行等を考察して、

⑤個別的に判定することが必要。

将来見込まれる一時金と借地権価格との関係

近い将来、以下の支払が見込まれる場合、

これらは借地権の効用を増加させるために

買い手が負担するものであることから、

借地権価格を構成する

1.更新料(借地契約の更新時に授受される一時金)、

2.増改築承諾料(既存建物の増改築の承諾を得るための一時金)

3.条件変更承諾料

(建物を非堅固から堅固にする等、借地契約の変更の承諾を得るための一時金)等

 

底地

宅地の類型は、その有形的利用権利関係の態様に応じて、

更地建付地借地権底地区分地上権等に分けられる。

 

底地とは、

宅地について借地権が付着している場合における

当該宅地の所有権をいう。

 

借地権とは、

借地借家法(廃止前の借地法を含む)に基づく

借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。

 

底地の価格は

①借地権の付着している宅地について、

②借地権の価格との相互関連において

③賃貸人に帰属する経済的利益

④貨幣額で表示したものをいう。

 

賃貸人に帰属する経済的利益とは

①当該宅地の実際実質賃料から諸経費等を控除した部分の

賃貸借等の期間に対応する経済的利益 

及び

②その期間の満了によって復帰する経済的利益の現在価値

つまり、

底地の権利者(所有者)は、

借地権が付着している限り、

自ら当該宅地を使用収益することはできないため、

底地の価格は、

①借地契約が持続する期間内の地代収入に基づく経済的利益のほか、

②近い将来、更新料・条件変更承諾料・増改築承諾料等の

一時金の発生が予測される場合の

これら一時金収入に基づく経済的利益や、

③近い将来、借地契約が終了して

完全所有権が復帰することが予想される場合の

最有効使用の実現等に基づく経済的利益

も加味して形成される。

 

底地の鑑定評価額は

下記①と②を関連付けて決定するものとする。

①実際支払賃料に基づく純収益の現在価値の総和

を求めることにより得た収益還元法による収益価格

②取引事例比較法による比準価格

 

この場合においては、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。

 

①将来における賃料の改定実現性とその程度

②借地権の態様及び建物の残存耐用年数

③契約締結の経緯並びに経過した借地期間及び残存期間

④契約に当って授受された一時金の額及びこれに関する契約条件

⑤将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件

⑥底地の取引慣行及び底地の取引利回り

⑦当該底地の存する土地に係る更地価格又は建付地価格

 

底地と収益還元法

底地の収益価格は、

①基本的には、契約期間中の純収益及び復帰価格の

現在価値の総和により求める。

 

底地は、更地等と異なり、

土地建物一体として生み出す収益を享受することが出来ず、

また、普通借地権等については更新性が高いことから、

当該借地権の付着している底地の収益価格は、

通常、「永久還元法※」により求めることとなる。」

※一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法

 

収益還元法において、

永久還元法を採用した場合は、

更地の取引事例収集が有効。

①復帰価格の算定は不要だが、

②収益価格の試算 or 鑑定評価額の決定のいずれの段階においても、

上限値として対象地の更地としての価格を勘案する必要があることから、

③更地の取引事例等を収集することは有効。

 

②しかし、定期借地権については更新性がないことから、

残存契約期間の短い定期借地権の付着している底地の収益価格を

直接還元法で求める場合、

有機還元法(インウッド式※)を採用する。

※地代収入に基づく純収益に割引率と有限の収益期間とを基礎とした複利年金現価率を乗じて得た額に、

収益期間満了時における土地価格(更地価格※)

を現在価値に換算した額を加算する。

※最有効使用前提価格なので収益還元法採用の場合、

土地残余法を適用する。

 

③更地復帰の実現性の可能性の高い底地に係る復帰価格については、

対象地の価格時点における更地価格を基準として査定することになる。

この過程で、更地又は敷地が最有効使用の状態にある

自用の建物及びその敷地の取引事例の収集が必要となる。

 

 

割引率、還元利回りの査定

底地の取引事例から得られる利回りとの比較も有効。

純収益を的確に把握し得る底地の取引事例を収集することが必要。


底地と取引事例比較法

取事比法の適用においては、

①対象不動産と代替競争関係にある

底地の取引事例を収集することが必要である。

②ただし、借地人居付きの底地の価格は、

当該借地契約の内容のいかんによって大きく左右されるから、

③事例の選択及び各種補正過程において、

借地契約の類似性+賃貸人の属性等を十分な検討が必要。

自用の建物及びその敷地(以下、自建)

不動産の類型(有形的利用・権利関係の態様)は、種別とともに

不動産の経済価値を本質的に決定づけるので、

類型に応じた適切な要因の分析や

評価手法の適用を行う必要がある。

 

自建とは

建物所有者とその敷地の所有者とが

同一人であり、

その所有者による使用収益を制約する権利の

付着していない場合における当該敷地と建物。

 

自建の特徴

①直ちに需要者の用に

供することが出来るので、

②取引当事者は、価格の三面性

(費用性/市場性/収益性)を

等しく考慮して取引意思決定する。

したがって、

自建の鑑定評価額

①原価法による積算価格

②取事比法による比準価格

③収還法による収益価格 

を関連づけて決定する。

 

貸家及びその敷地(以下、貸家)

貸家とは

建物所有者とその敷地の所有者とが

同一人であるが、

建物が賃貸借に供されている場合

における当該敷建。

 

貸家とは

①借地人が居付であるので、

②直ちに需要者のように供することが出来ず、

③取引当事者(投資家)は、

投資用不動産として

収益性を重視して取引意思決定する。

したがって、

貸家鑑定評価額は

①実際実質賃料

(売主が既に受領した一時金のうち

売買等にあたって

買主に承継されない部分がある場合には、

当該部分の運用益償却額を

含まないものとする)

に基づく純収益等の現在価値の総和

を求めることにより得た収益価格を標準とし、

②積算価格

③比準価格 

を比較考量して決定する。

 

借地権付建物(以下、借建)

借建とは

借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物およびその敷地

借建鑑定評価額は

当該建物を借地人が使用しているものについての鑑定評価額は、

①原価法による積算価格

②取事比法による比準価格

③収還法による収益価格 

を関連づけて決定する。

  

積算価格について、自建との比較

自建の再調達原価は、

当該建物及びその敷地が

既成市街地に存する場合には、

取事比法及び土地残余法により求めた

更地価格に

建物再調達原価を加算して求める。

 

借地権付建物の再調達原価は、

借地権価格に

建物再調達原価を加算して

求める。

 

借地権の価格を求めるにあたっては

①借地権の取引慣行の成熟の程度によって

適用する方法が異なるため、

②借地権に係る地域分析及び個別分析を行い、

③借地権の態様や取引慣行を

明確にしなければならない。

 

比準価格について、自建との比較

自建の場合、

土地、建物並びに建物及びその敷地に係る

各個別的要因について

比較可能な自建の取引事例を

収集・選択することになる。

 

借地権付建物の場合、

①これらの個別的要因に加え、 

②借地権の契約の内容、

③借地権の態様についても

比較可能な借地権付建物の取引事例を

選択・収集する必要がある。

借建鑑定評価額(貸家)の場合

当該建物が賃貸されているものについての

鑑定評価額は、

①実際実質賃料に基づく純収益の

現在価値の総和

を求めることにより得た収益価格を標準とし、

②原価法による積算価格

③取事比法による比準価格

を比較考量して決定する。

 

貸家との比較

総費用について

貸家に直接還元法及びDCF法を

適用する場合には、

総費用の査定に当たって、

土地の公租公課を計上する。

 

借地権付建物(貸家)の場合は、

総費用の査定に当たって、

土地の公租公課を計上せず、

支払地代を計上する。

なお、

現行地代が周辺相場よりも

明らかに割高or割安の場合には、

売買に際し地代が改定される場合もあるため、

地代改定の可能性について

考慮する必要がある。

特に、

DCF法の適用に当たり、

分析期間内に地代の改定が

見込まれる場合には、

改定後地代をキャッシュフロー

反映すべきである。

さらに、

必要に応じて借地契約の更新期の費用項目

として、

更新料等の一時金を計上する場合もある。

 

還元利回り等について

借地権付建物は、貸家敷と異なり、

①将来地代の値上げにより

賃料差額が縮小するリスクや、

②更新料、建替え承諾料等の負担を

求められるリスクや、

③賃貸人側の正当事由に基づき

借地契約が終了するリスク等 

がある。

したがって、

還元利回りや最終還元利回り等の査定

に当たっては、

これら借地権付建物に固有のリスクを

反映すべきである。

 

還元方法について

旧法に基づく借地権や、

借地借家法に基づく

いわゆる普通借地権の場合、

契約期間が満了しても契約更新される可能性が高い。

しかし、

定期借地権の場合、通常、

契約期間の満了に伴って

確定的に契約が終了する。

したがって、

残存契約期間の短い定期借地権付建物の場合、

直接還元法の適用に当たっては、

有期還元法のモデルである

インウッド式(初年度純収益×複利年金現価率+復帰価格×複利現価率)

を採用し、

DCF法の適用に当たっては、

当該残存期間を分析機関と設定することが、

それぞれ合理的と考えられる。

なお

どちらの方法においても、復帰価格は、

復帰時点の建物取壊し費用を

計上するものとし、

土地価格等を計上してはならない。

 

区分所有建物及びその敷地の評価・意義・留意点

区分所有建物及びその敷地の定義

建物の区分所有法に関する法律

①第2条第3項に規定する専有部分

②当該専有部分に係る第2条第4項に規定する

共用部分の共有持分

③第2条第6項に規定する敷地利用権

 

区分所有建物およびその敷地で、

専有部分を区分所有者が使用しているものについての鑑定評価額

①原価法による積算価格

②取事比法による比準価格

③収益還元法による収益価格  

を関連付けて決定するものとする。

 

区分所有建物およびその敷地で、専有部分が賃貸されているものについての鑑定評価額

①実際実質賃料

(売主が既に受領した一時金のうち

売買等にあたって

買主に承継されない部分がある場合には、

当該部分の運用益及び償却額を

含まないものとする。)

に基づく純収益の現在価値の総和

を求めることにより得た収益価格を標準とし、

②積算価格及び比準価格を

比較考量して決定するものとする。

 

Ex)対象不動産に経済価値のある専用庭が付着しているとき

原価法

区分所有建物及びその敷地の積算価格は、

①区分所有建物の対象となっている

一棟の建物及びその敷地の積算価格を求め、

②当該積算価格に当該一棟の建物の

階層別・同一階層内の位置別効用比

により求めた配分率を

乗ずることにより求める。

③本件庭は専用部分の個別的要因として

配分率の査定の中で反映させるか、

配分率を乗じた後に個別修正として

反映させる。

 

取事比法

個別的要因の比較に反映させると同時に、

取引事例選択の際の判断材料としても活用

 

収益還元法

主として賃料の査定において反映させる。

なお、 

専用庭使用料を負担している場合は、

費用計上する必要あり。

 

Ex)敷地利用権が借地権であった場合

原価法 

①一棟の敷地の再調達原価に替えて、

②一棟の敷地の借地権価格を

求めるものとする。

また、

①敷地利用権が借地権であることに起因して、

土地建物一体としての市場性の減退が

認められる場合には、

②これを減価修正において

適切に反映させる必要がある。

取事比法

区分所有建物及びその敷地に係る

事例選択において、

①敷地利用権について

同様の権利形態を有する事例を

採用することが望ましい。

②また、地代等の契約内容について、

個別的要因比較の中で

斟酌しなければならない。

 

収益還元法

①一般的な収益還元法における費用項目

として、

「公租公課」が存するが、

②対象不動産の所有者は

土地の所有権を有しないことから、

③「土地の公租公課

(固定資産税、都市計画税)」の計上不要

これに換えて、

④「地代」を計上する必要が出てくる。

また、

敷地利用権が借地権であることによる

市場性の減退について、

①還元利回り

②割引率等 

の査定の中で検討しなければならない。

自用の建物及びその敷地(以下、自建)

不動産の類型(有形的利用・権利関係の態様)は、種別とともに

不動産の経済価値を本質的に決定づけるので、

類型に応じた適切な要因の分析や

評価手法の適用を行う必要がある。

 

自建とは

建物所有者とその敷地の所有者とが

同一人であり、

その所有者による使用収益を制約する権利の

付着していない場合における当該敷地と建物。

 

自建の特徴

①直ちに需要者の用に

供することが出来るので、

②取引当事者は、価格の三面性

(費用性/市場性/収益性)を

等しく考慮して取引意思決定する。

したがって、

自建の鑑定評価額

①原価法による積算価格

②取事比法による比準価格

③収還法による収益価格 

を関連づけて決定する。

 

貸家及びその敷地(以下、貸家)

貸家とは

建物所有者とその敷地の所有者とが

同一人であるが、

建物が賃貸借に供されている場合

における当該敷建。

 

貸家とは

①借地人が居付であるので、

②直ちに需要者のように供することが出来ず、

③取引当事者(投資家)は、

投資用不動産として

収益性を重視して取引意思決定する。

したがって、

貸家鑑定評価額は

①実際実質賃料

(売主が既に受領した一時金のうち

売買等にあたって

買主に承継されない部分がある場合には、

当該部分の運用益償却額を

含まないものとする)

に基づく純収益等の現在価値の総和

を求めることにより得た収益価格を標準とし、

②積算価格

③比準価格 

を比較考量して決定する。

 

借地権付建物(以下、借建)

借建とは

借地権を権原とする建物が存する場合における当該建物およびその敷地

借建鑑定評価額は

当該建物を借地人が使用しているものについての鑑定評価額は、

①原価法による積算価格

②取事比法による比準価格

③収還法による収益価格 

を関連づけて決定する。

  

積算価格について、自建との比較

自建の再調達原価は、

当該建物及びその敷地が

既成市街地に存する場合には、

取事比法及び土地残余法により求めた

更地価格に

建物再調達原価を加算して求める。

 

借地権付建物の再調達原価は、

借地権価格に

建物再調達原価を加算して

求める。

 

借地権の価格を求めるにあたっては

①借地権の取引慣行の成熟の程度によって

適用する方法が異なるため、

②借地権に係る地域分析及び個別分析を行い、

③借地権の態様や取引慣行を

明確にしなければならない。

 

比準価格について、自建との比較

自建の場合、

土地、建物並びに建物及びその敷地に係る

各個別的要因について

比較可能な自建の取引事例を

収集・選択することになる。

 

借地権付建物の場合、

①これらの個別的要因に加え、 

②借地権の契約の内容、

③借地権の態様についても

比較可能な借地権付建物の取引事例を

選択・収集する必要がある。

借建鑑定評価額(貸家)の場合

当該建物が賃貸されているものについての

鑑定評価額は、

①実際実質賃料に基づく純収益の

現在価値の総和

を求めることにより得た収益価格を標準とし、

②原価法による積算価格

③取事比法による比準価格

を比較考量して決定する。

 

貸家との比較

総費用について

貸家に直接還元法及びDCF法を

適用する場合には、

総費用の査定に当たって、

土地の公租公課を計上する。

 

借地権付建物(貸家)の場合は、

総費用の査定に当たって、

土地の公租公課を計上せず、

支払地代を計上する。

なお、

現行地代が周辺相場よりも

明らかに割高or割安の場合には、

売買に際し地代が改定される場合もあるため、

地代改定の可能性について

考慮する必要がある。

特に、

DCF法の適用に当たり、

分析期間内に地代の改定が

見込まれる場合には、

改定後地代をキャッシュフロー

反映すべきである。

さらに、

必要に応じて借地契約の更新期の費用項目

として、

更新料等の一時金を計上する場合もある。

 

還元利回り等について

借地権付建物は、貸家敷と異なり、

①将来地代の値上げにより

賃料差額が縮小するリスクや、

②更新料、建替え承諾料等の負担を

求められるリスクや、

③賃貸人側の正当事由に基づき

借地契約が終了するリスク等 

がある。

したがって、

還元利回りや最終還元利回り等の査定

に当たっては、

これら借地権付建物に固有のリスクを

反映すべきである。

 

還元方法について

旧法に基づく借地権や、

借地借家法に基づく

いわゆる普通借地権の場合、

契約期間が満了しても契約更新される可能性が高い。

しかし、

定期借地権の場合、通常、

契約期間の満了に伴って

確定的に契約が終了する。

したがって、

残存契約期間の短い定期借地権付建物の場合、

直接還元法の適用に当たっては、

有期還元法のモデルである

インウッド式(初年度純収益×複利年金現価率+復帰価格×複利現価率)

を採用し、

DCF法の適用に当たっては、

当該残存期間を分析機関と設定することが、

それぞれ合理的と考えられる。

なお

どちらの方法においても、復帰価格は、

復帰時点の建物取壊し費用を

計上するものとし、

土地価格等を計上してはならない。

 

区分所有建物及びその敷地の評価・意義・留意点

区分所有建物及びその敷地の定義

建物の区分所有法に関する法律

①第2条第3項に規定する専有部分

②当該専有部分に係る第2条第4項に規定する

共用部分の共有持分

③第2条第6項に規定する敷地利用権

 

区分所有建物およびその敷地で、

専有部分を区分所有者が使用しているものについての鑑定評価額

①原価法による積算価格

②取事比法による比準価格

③収益還元法による収益価格  

を関連付けて決定するものとする。

 

区分所有建物およびその敷地で、専有部分が賃貸されているものについての鑑定評価額

①実際実質賃料

(売主が既に受領した一時金のうち

売買等にあたって

買主に承継されない部分がある場合には、

当該部分の運用益及び償却額を

含まないものとする。)

に基づく純収益の現在価値の総和

を求めることにより得た収益価格を標準とし、

②積算価格及び比準価格を

比較考量して決定するものとする。

 

Ex)対象不動産に経済価値のある専用庭が付着しているとき

原価法

区分所有建物及びその敷地の積算価格は、

①区分所有建物の対象となっている

一棟の建物及びその敷地の積算価格を求め、

②当該積算価格に当該一棟の建物の

階層別・同一階層内の位置別効用比

により求めた配分率を

乗ずることにより求める。

③本件庭は専用部分の個別的要因として

配分率の査定の中で反映させるか、

配分率を乗じた後に個別修正として

反映させる。

 

取事比法

個別的要因の比較に反映させると同時に、

取引事例選択の際の判断材料としても活用

 

収益還元法

主として賃料の査定において反映させる。

なお、 

専用庭使用料を負担している場合は、

費用計上する必要あり。

 

Ex)敷地利用権が借地権であった場合

原価法 

①一棟の敷地の再調達原価に替えて、

②一棟の敷地の借地権価格を

求めるものとする。

また、

①敷地利用権が借地権であることに起因して、

土地建物一体としての市場性の減退が

認められる場合には、

②これを減価修正において

適切に反映させる必要がある。

取事比法

区分所有建物及びその敷地に係る

事例選択において、

①敷地利用権について

同様の権利形態を有する事例を

採用することが望ましい。

②また、地代等の契約内容について、

個別的要因比較の中で

斟酌しなければならない。

 

収益還元法

①一般的な収益還元法における費用項目

として、

「公租公課」が存するが、

②対象不動産の所有者は

土地の所有権を有しないことから、

③「土地の公租公課

(固定資産税、都市計画税)」の計上不要

これに換えて、

④「地代」を計上する必要が出てくる。

また、

敷地利用権が借地権であることによる

市場性の減退について、

①還元利回り

②割引率等 

の査定の中で検討しなければならない。

証券化対象不動産とは(暗記)

次のいずれかに該当する

不動産取引の目的である不動産又は

不動産取引の目的となる見込みのある不動産

(信託受益権に係るものを含む。)をいう。

 

資産の流動化に関する法律に規定する資産の流動化

並びに投資信託及び投資法人

に関する法律に規定する

投資信託に係る不動産取引並びに

同法に規定する投資法人が行う不動産取引

資産の流動化に関する法律又は投資信託及び投資法人に関する法律に基づく評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合)

 

②不動産特定共同事業法に規定する不動産特定共同事業契約に係る不動産取引

 

金融商品取引法第2条に規定する有価証券

並びに有価証券とみなされる権利の債務の履行等を主たる目的として収益又は

利益を生ずる不動産取引

 

①の場合は、

(以下「投資法人等」という。)に係る

①投資対象資産としての不動産の取得時 又は

保有期間中の価格として

③投資家に開示されることを目的に、

④投資家保護の観点から

⑤対象不動産の収益力を適切に反映する

収益価格

に基づいた投資採算価値を求める必要がある。

 

①投資対象資産の取得時又は保有期間中の価格

としての鑑定評価に際しては、

②資産流動化計画等により投資家に開示される

対象不動産の運用方法を所与とするが、その運用方法による使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。

 

なお、

投資法人等が投資対象資産を譲渡するときに

依頼される鑑定評価で求める価格は

正常価格として求めることに

留意する必要がある。

 

鑑定評価の方法は、

基本的に収益還元法のうち

DCF法により求めた試算価格を標準とし、

直接還元法による検証を行って求めた

収益価格に基づき、

比準価格及び積算価格による検証を行い

鑑定評価額を決定する。

 

証券化対象不動産(暗記です)

証券化対象不動産の鑑定評価における

収益価格を求めるにあたっては、

DCF法を適用しなければならない。

この場合において、

合わせて直接還元法を適用することにより

検証を行うことが必要である。

 

運営収益

A.貸室賃貸収入

対象不動産の全部又は貸室部分について

賃貸又は運営委託することにより

経常的に得られる収益(満室想定)

 

B.共益費収入

対象不動産の維持管理運営において

経常的に要する費用

(電気水道ガス地域冷暖房熱源等に要する費用を含む)のうち、

共用部分に係るものとして

賃借人との契約により徴収する収入

(満室想定)

 

C.水道光熱費収入

対象不動産の運営において

電気水道ガス地域冷暖房熱源等に

要する費用のうち、

貸室部分に係るものとして

賃借人との契約により徴収する収入

(満室想定)

 

D.駐車場収入

対象不動産に附属する駐車場を

テナント等に賃貸することによって

得られる収入及び

駐車場を時間貸しすることによって

得られる収入

 

E.その他収入

その他看板、アンテナ、自動販売機等の

施設設置料。

礼金、更新料等の返還を有しない一時金等の

収入。

 

F.空室等損失

各収入について

空室や入替期間等の発生に基づく減少分

 

D.貸倒損失

各収入について

貸し倒れの発生予測に基づく減少分

 

運営費用

A.維持管理費

建物・設備管理・保安警備・清掃等 

対象不動産の維持管理のために経常的に

要する費用

 

対象不動産の運営において

電気水道ガス地域冷暖房熱源等に要する費用

 

C.修繕費

1.対象不動産に係る建物、設備等の修理改良等のために支出した金額のうち

2.当該建物、設備等の通常の維持管理のため

又は

3.一部がき損した建物、設備等につき

その原状を回復するため 

に経常的に要する費用

 

D.PMフィー:

対象不動産の管理業務に係る経費

 

E.テナント募集費用等

1.新規テナント募集に際して行われる

仲介業務や広告宣伝等に要する費用

2.テナントの賃貸借契約の更新再契約業務に要する費用

 

F.公租公課

固定資産税(土地・建物・償却資産)

都市計画税(土地・建物)

 

G.損害保険料

1.対象不動産及び附属設備に係る火災保険、

2.対象不動産の欠陥や管理上の事故による

三者等の損害を担保する

賠償責任保険等の料金

 

H.その他費用:

その他支払地代、

道路占用使用料等の費用

 

運営純収益

運営収益から運営費用を控除して得た額

 

一時金の運用益

預り金的性格を有する保証金等の運用益

 

資本的支出

1.対象不動産に係る建物・設備等の

修理・改良等のために支出した金額のうち、

2.当該建物・設備等の価値を高め、又は 

その耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する支出

 

純収益

運営純収益に一時金の運用益を加算し

資本的支出を控除した額