不動産の鑑定評価に当たっては、

基本的事項として、対象不動産、

価格時点及び価格又は賃料の種類を

確定しなければならない。

第1節 対象不動産の確定
不動産の鑑定評価を行うに当たっては、まず、鑑定評価の対象となる土地又は建物等を物的に確定することのみならず、鑑定評価の対象となる所有権及び所有権以外の権利を確定する必要がある。
対象不動産の確定は、鑑定評価の対象を明確に他の不動産と区別し、特定することであり、それは不動産鑑定士が鑑定評価の依頼目的及び条件に照応する対象不動産と当該不動産の現実の利用状況とを照合して確認するという実践行為を経て最終的に確定されるべきものである。

 

(1)鑑定評価の条件設定の意義
鑑定評価に際しては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることのみでは多様な不動産取引の実態に即応することができず、社会的な需要に応ずることができない場合があるので、条件設定の必要性が生じてくる。

 

対象確定条件

対象不動産の確定に当たって

必要となる鑑定評価の条件を、

対象確定条件という。

 

対象確定条件は、

①対象不動産の所在/範囲等の物的事項及び

②対象不動産の所有権/賃借権等の

対象不動産の権利の態様に関する事項

を確定するために必要な条件である。

 

対象確定条件は、

①対象不動産に係る諸事項についての

調査/確認を行ったうえで、

②依頼目的に照らして

その条件の妥当性を検討しなければならない。

 

①不動産が土地のみの場合

又は土地及び建物等の結合により

構成されている場合において、

その状態を所与として

鑑定評価の対象とすること

 

②不動産が土地及び建物等の結合により

構成されている場合において、

その「土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)

として鑑定評価の対象とすること

(この場合の鑑定評価を

独立鑑定評価という。)。

 

③不動産が土地及び建物等の結合により

構成されている場合において、

その状態を所与として、

その不動産の「構成部分」を

鑑定評価の対象とすること

(この場合の鑑定評価を

部分鑑定評価という。)。

 

④不動産の「併合又は分割」を前提として、

「併合後又は分割後」の不動産を

単独のものとして鑑定評価の対象とすること

(この場合の鑑定評価を

併合鑑定評価又は分割鑑定評価という。)。

 

(5)造成に関する工事が完了していない土地

又は建築に係る工事が完了していない建物について、

当該工事の完了を前提として鑑定評価の対象とすること

(この場合の鑑定評価を未竣工建物等鑑定評価という。)。

 

 

 なお、上記に掲げるもののほか、

対象不動産の権利の態様に関するものとして、

価格時点と異なる権利関係を前提として

鑑定評価の対象とすることがある。

 

 

 

対象確定条件を設定するに当たっては、

対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を

行った上で、

依頼目的に照らして、

鑑定評価書の利用者の利益を

害するおそれがないかどうかの観点から

当該条件設定の妥当性を確認しなければならない。

 

 

なお、未竣工建物等鑑定評価を行う場合は、

上記妥当性の検討に加え、

価格時点において想定される竣工後の不動産に係る

物的確認を行うために必要な設計図書等

及び権利の態様の確認を行うための請負契約書等を

収集しなければならず、

さらに、当該未竣工建物等に係る

法令上必要な許認可等が取得され、

発注者の資金調達能力等の観点から

工事完了の実現性が高いと判断されなければならない。

 

証券化対象不動産の未竣工建物等鑑定評価は、上記なお書きに定める要件に加え、工事の中止、工期の延期又は工事内容の変更が発生した場合に生じる損害が、当該不動産に係る売買契約上の約定や各種保険等により回避される場合に限り行うことができる。

 

基本的事項確定の必要性

不動産の鑑定評価にあたっては、

基本的事項として、

対象不動産/価格時点/価格又は賃料の種類

を確定しなければならない。

 

不動産の鑑定評価を行うに当たっては、まず

①鑑定評価の対象となる土地又は建物等を

物的に確認することのみならず、

②鑑定評価の対象となる

所有権及び所有権以外の権利

を確定する必要がある。

 

対象不動産の確定は、

①鑑定評価の対象を

明確に他の不動産と区別し、

特定することであり、

②それは鑑定士が

鑑定評価の依頼目的及び

条件に照応する対象不動産と、

③当該不動産の

現実の利用状況とを照合して確認する

という実践行為を経て、

④最終的に確定されるべきものである。

 

対象不動産の確定が必要な理由

不動産は、

①その物的な範囲等が可変的であり、また、

②所有権/賃借権等の権利の態様が

複合的・重層的で複雑な様相を呈している。

そのため、

③鑑定評価の対象となる範囲/権利が変わると、

③鑑定評価額も変化するため、

対象不動産の確定が必要である。

 

 

価格時点の確定が必要な理由

価格時点とは、

不動産の価格の判定の基準日である。

①不動産の価格を形成する価格形成要因は、

②時の経過により変化するものであり、

③価格時点が変わると

鑑定評価額も変化するため、

価格時点の確定が必要である。

 

価格又は賃料の確定が必要な理由

不動産の鑑定評価によって求める価格は、

基本的には正常価格であるが、

多様な不動産取引に即応し

社会的な需要に応ずるために、

鑑定評価の依頼目的及び条件に応じて、

限定特殊特定価格を求める場合があるので、

依頼目的及び条件に即して

価格の種類を適切に判断し、明確にすべき。

 

価格の種類が変わることにより、

鑑定評価額が変わる場合があるので、

価格の種類を確定する必要がある。

 

 

対象不動産の確認・必要性

 

対象不動産の確認とは、

①「基本的事項の確定」により

確定された対象不動産が

②現実にその通り存在するかを

確認する作業をいう。

 

対象不動産の確認に当たっては、

①「基本的事項」により確定された

対象不動産について、

②その内容を明瞭にしなければならない。

 

対象不動産の確認は、

①対象不動産の物的確認/権利の態様の

確認に分けられ、

②実地調査/聴聞/公的資料の確認等により、

的確に行う必要がある。

 

不動産の鑑定評価にあたっては、

基本的事項として、

対象不動産/価格時点/価格又は賃料の種類

を確定しなければならない。

不動産の鑑定評価を行うに当たっては、まず

①鑑定評価の対象となる

土地又は建物等を

物的に確認することのみならず

②鑑定評価の対象となる 

所有権及び所有権以外の権利

を確定する必要がある。

 

対象不動産の確定は、

①鑑定評価の対象を

明確に他の不動産と区別し、

特定することであり、

②それは鑑定士が

鑑定評価の依頼目的及び条件に

照応する対象不動産と、

③当該不動産の

現実の利用状況とを照合して

確認するという実践行為を経て

④最終的に確定されるべきものである。

 

「確認」を省略してはならない理由

①依頼の受付に続く

基本的事項の確定においては、

②依頼者の提示した対象確定条件により、 

③観念的に

対象不動産の範囲等が

確定されているに過ぎない。

 

対象不動産を最終的に確定するためには、

不動産鑑定士が、対象不動産について

②現実にその通り存在しているかを

確認する必要がある。

③観念的に確定された事項と、

確認した事項が一致して

④最終的に対象不動産が確定されるが、

⑤両者が一致しなければ

対象不動産の確定が出来ず

鑑定評価が出来ない。

 

したがって、

①対象不動産の確認は、

②適正な鑑定評価の前提となるもので、

③実地調査の上、閲覧、聴聞等を通じて的確に行うべきであり、

③いかなる場合においてもこの作業を省略してはならない。

④対象不動産の確認を行った結果が、

⑤依頼者から設定された対象確定条件と

相違する場合には、

⑥再度依頼者に説明の上、

対象確定条件の改定を求める等

適切な措置を講じなければならない。

 

不動産の鑑定評価を行う場合、

不動産は

①その範囲が可変的であり、

②権利の態様については所有権、

地上権等の物権のみならず

③外見上からは不分明な賃借権等の債権も

対象となり、

④これらが複合的に存在する等

対象が複雑な様相を呈するため、

対象不動産の確定が必要となる。

 

不動産は、

①その物的な範囲等が可変的であり、

②所有権賃借権等の権利の態様が

複合的重層的で複雑な様相を呈している。

③そのため鑑定評価の対象となる

範囲や権利が変わると

④鑑定評価額も変化するため、

対象不動産の確定が必要である。

  

想定上の条件

対象確定条件により確定された

対象不動産について、 

鑑定評価に際しては、

①現実の地域要因個別的要因を所与

として不動産の価格を求めることのみでは、

②多様な不動産取引に即応することが出来ず、

③社会的需要に応ずることが出来ない場合があるので、

④依頼目的に応じ対象不動産に係る価格形成要因のうち

⑤地域要因/個別的要因に想定上の条件を付加する場合があるが、

 

この場合には依頼により

付加する想定上の条件が、

①実現性

ⅰ依頼者との間で

条件付加に係る鑑定評価依頼契約上の合意があり、

ⅱ当該条件を実現するための

行為を行うものの事業遂行能力等を

勘案したうえで

ⅲ当該条件が実現する確実性が認められること

 

②合法性

公法上私法上の諸規制に反しないこと。

 

③「関係当事者及び第三者」の利益を

害する恐れがないか等

ⅰ依頼者及び鑑定評価の結果について

依頼者と密接な利害関係を有する者のほか、

 

ⅱ法律に義務付けられた

鑑定士による鑑定評価を踏まえ

不動産の生み出す収益を原資として

発行される証券の購入者、

 

ⅲ鑑定評価を踏まえ

設定された抵当権をもとに発行される

証券の購入者)

 

の観点から妥当なものでなければならない。

 

なお、想定上の条件を設定して

鑑定評価を行った場合、

鑑定評価報告書に

①想定上の条件について

それらが妥当なものであると判断した根拠

を明らかにするとともに、

②必要があると認められるときは、

当該条件が付加されない場合の

価格等の参考事項を記載すべきである。

また、

想定上の条件が

妥当性を欠くと認められる場合には、

依頼者に説明の上、

妥当な条件へ改定することが必要。

 

Ex)土壌汚染が存在し、「汚染の除去等の措置がなされたものとして」という条件付加

①ⅰ所有者や購入予定者等の

対象不動産の現況を変更する

権限を持つものに、

土壌汚染の除去等を行う意思や

着手の確認を行い、

依頼書や確認書等に

その旨を記載するものとする。

 

 ⅱ合わせてその変更を行う資力

があるかどうかを勘案

 

②土壌汚染対策法の規定による

要措置区域・形質変更時要届出区域

の指定等がなされている土地を含む場合、

汚染の除去等は法の手続きによって

行われることから、

当該条件付加は妥当性を欠く。

(有害物質・調査義務等も検討する。)

現状を所与とする鑑定評価を行うべき。

 

③依頼目的が担保評価や

三者への売却価格の参考とするための

鑑定評価の場合、

現況と異なる個別的要因を

前提とした鑑定評価を行うことによって、

対象不動産の価格に関する

関係当事者及び第三者の適切な判断を

誤らせる可能性を有しており

妥当性を欠く。

現状を所与とする鑑定評価を行うべき。

 

証券化対象不動産の鑑定評価においては、

投資家保護の観点から

土壌汚染の価格に与える影響についての

結論を求められるため、

当該条件設定は妥当性を欠く。

■価格時点論

不動産の鑑定評価にあたっては、

基本的事項として、

対象不動産/価格時点/価格又は賃料の種類

を確定しなければならない。

 

価格時点とは、

不動産の価格の判定の基準日である。

 

不動産の価格は効用 相対的希少性 有効需要

三者の相関結合によって生じる経済価値を

貨幣額をもって表示したものであり、

この不動産の経済価値は

これら三者を動かす価格形成要因の相互作用

によって決定されるが、

要因それ自体も

常に変動する傾向を持っている。

また、

個別の不動産の価格は、

その不動産が属する用途的地域の価格水準

という大枠の下で形成されるが、

不動産の属する地域は

固定的なものではなくて、

常に拡大縮小/集中拡散/発展衰退等

の変化の過程にある。

 

ところで、

不動産の鑑定評価は、

その不動産の価格形成過程を追及し、

分析することを本質とするものであるから、

鑑定評価を行うに当たっては、

不動産の価格形成要因の

推移及び動向を十分に

分析しなければならない。

 

①価格形成要因は、

時の経過により変動し、

不動産の価格は常に変化するものであるから、

不動産の価格は

その判定の基準となった日においてのみ

妥当するものである

(=時の経過により変動するものであり、

価格時点が変わると鑑定評価額も変化する。)

 

②したがって、

不動産の鑑定評価を行うに当たっては、

不動産の価格の判定の基準日

を確定する必要があり、

この日を価格時点という。

 

過去時点

過去時点の鑑定評価は、

①対象不動産の確認等が可能であり、かつ

②鑑定評価に必要な要因資料及び

事例資料の収集が可能な場合

に限り行うことが出来る。

 

③また時の経過により

対象不動産及び近隣地域が

価格時点から鑑定評価を行う時点までの間に

変化している場合もあるので

 

④このような事情変更のある場合の

価格時点における対象不動産の

確認等については、

 

⑤価格時点に近い時点の

確認資料等を出来る限り収集し、

それを基礎に判断すべきである。


将来時点

将来時点の鑑定評価は、

①対象不動産の確定

②価格形成要因の把握、分析、

③最有効使用の判定 

について、

すべて想定し、予測することとなり、

④また収集する資料も

鑑定評価を行う時点までのものに限られ、

不確実にならざるを得ないので、

⑤原則としてこのような鑑定評価は

行うべきではない。

 

⑥ただし、

特に必要がある場合において、

鑑定評価上妥当性を欠くことがないと

認められるときは、将来の価格時点を

設定することが出来るものとする。

 

■価格の種類

正常価格と限定価格

 

不動産の鑑定評価によって求める価格は、

①基本的には正常価格であるが、

②鑑定評価の依頼目的に対応した条件に応じて

限定特定特殊価格を求める場合があるので、

③依頼目的に対応した条件に即して

価格の種類を適切に判断し、

明確にすべきである。

なお、

評価目的に応じ、

特定価格を求めなければならない場合

があることに留意しなければならない。

 

正常価格とは、

市場性を有する不動産について、

現実の社会経済情勢の下で合理的

と考えられる条件を満たす市場

で形成されるであろう市場価値

を表示する適正な価格をいう。

 

限定価格とは、

①市場性を有する不動産について、

②不動産と取得する他の不動産との併合、又は

③不動産の一部を取得する際の分割等に

基づき、

④正常価格と同一の市場概念の下において

形成されるであろう市場価値と

かい離することにより、

⑤市場が相対的に限定される場合における

⑥取得部分の

⑦当該市場限定に基づく経済価値を

適正に表示する価格をいう。

 

①借地権者が底地の併合を目的

とする売買に関連する場合

②隣接不動産の併合を目的

とする売買に関連する場合

③経済合理性に反する不動産の分割等を前提

とする売買に関連する場合

 

限定価格は、

市場性を有する不動産についての価格

である点は正常価格と共通している。

しかし、

合理的な市場を前提とする正常価格と異なり、

市場限定下における特定の当事者間においてのみ経済合理性が認められる価格である。

 

隣接地併合

ある土地を隣接地と併合した場合、

併合後の土地の価格が、

併合前のそれぞれの価格の合計額より

高くなることがあるが、

これは、併合前の土地の

「最有効使用」に比し、

併合後の土地の「最有効使用」の程度が

上昇するため増分価値が生じるため。

 

ある土地の所有者が

隣接地を併合しようとする場合、

併合による増分価値が生じる際には、

正常価格を上回る対価を持って

取引を行っても、

特定の当事者間において経済合理性が成り立つため、

当該特定当事者間の市場限定に基づく

限定価格を求め得ることになる。

したがって、

隣接地の併合であっても、

整形地同士の併合等、

増分価値が生じない場合は、

正常価格を求めることとなる。

 

1整形地化 2画地規模拡大 3接道条件改善等

の理由により最有効使用の程度が

上昇するため、

併合後の土地の経済価値が、 

併合前のそれぞれの土地の経済価値の合計を 

上回ることがある(増分価値発生)。

 

このような場合、

①併合前の一方の土地所有者は、

②他方の土地の取得に際し、

③第三者がその土地を取得する場合

と比べて増分価値を享受できる分だけ、

④正常価格よりも高い価格を

提示しても経済合理性が成り立つため、

⑤第三者の介入する余地がなくなることから、

求める価格は限定価格となる。

 

隣接地併合に係る限定価格の求め方(更地の場合)

まず、

①併合前の各画地の正常価格と、

②併合後の一体画地としての正常価格を求め、

③併合後の一体画地としての価格から、

④併合前の各画地の価格の合計額を控除して、

⑤増分価値を求める。

次に、

①この増分価値のうち、

②対象地に配分されるべき適正な額を

③対象地の正常価格に加算して

決定するものとする。

 

なお、

併合を目的とする場合でも、

増分価値が発生しない場合は、

市場が相対的に限定されることはないので、

限定価格とはならない。

 

限定価格評価における価格諸原則の活用

正常価格とは、

市場参加者が最有効使用を前提とした価値判断

を行うことを前提とした価格だから、

限定価格の評価に当たっては、

最有効使用の原則を活用し、

併合前の各画地と、

併合後の一体地としての画地の、

それぞれの最有効使用を

適切に判定する必要がある。

また、

不動産のある部分が

その不動産全体の収益獲得に寄与する度合いは、

その不動産全体の価格に影響を及ぼす

(寄与の原則)。

 

併合により生じる増分価値は

併合される両者が寄与して

生じさせたものであるので、

限定価格の評価に当たっては、

「寄与の原則」を活用し、

増分価値のうち

対象地に配分されるべき適正な額を、

適切な方法

(単価比・総額比、買入限度額比等)

により求めるものとする。


Ⅰ 価格
不動産の鑑定評価によって求める価格は、

基本的には正常価格であるが、

鑑定評価の依頼目的に対応した条件により

限定価格、特定価格又は特殊価格を求める

場合があるので、依頼目的に対応した条件を踏まえて価格の種類を適切に判断し、明確にすべきである。


1.正常価格

正常価格とは、

市場性を有する不動産について、

現実の社会経済情勢の下で

合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する

適正な価格をいう。

この場合において、

現実の社会経済情勢の下で

合理的と考えられる条件を満たす市場とは、

以下の条件を満たす市場をいう。

 

1   市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、 参入、退出が自由であること。

    なお、ここでいう市場参加者は、

自己の利益を最大化するため

次のような要件を満たすとともに、

慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。

 

① 売り急ぎ、買い進み等をもたらす

特別な動機のないこと。

② 取引を成立させるために必要となる

通常の知識や情報を得ていること。

③ 取引を成立させるために通常必要と認められる

労力、費用を費やしていること。

④ 対象不動産の

最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。

⑤ 買主が通常の資金調達能力を有していること。

 

 

2 取引形態が、

市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。

 

3 対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。

 


2.限定価格
限定価格とは、
市場性を有する不動産について、
不動産と取得する他の不動産との併合

又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき

正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、

市場が相対的に限定される場合における

取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を

適正に表示する価格をいう。

 

限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。

(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合

 


3.特定価格

特定価格とは、
市場性を有する不動産について、
法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、
正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより

正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における

不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。

特定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。

(1)各論第3 章第1 節に規定する証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で、投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合

 

(2)民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合

 

(3)会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合

 

 

② 特定価格を求める場合の例について
特定価格を求める場合の例として掲げられているものについて、それぞれの場合ごとに特定価格を求める理由は次のとおりである。

 

ア 各論第3章第1節に規定する

証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で、

投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合

 

 

 投資法人等の投資対象資産としての

不動産の取得時又は保有期間中の価格を求める鑑定評価については、

資産流動化計画等により

投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とするが、

その運用方法による使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には

特定価格として求めなければならない。

なお、投資法人等が投資対象資産を譲渡するときに依頼される鑑定評価で求める価格は正常価格として求めることに留意する必要がある。

    この場合は、基本的に収益還元法のうちDCF法により求めた試算価格を標準とし、直接還元法による検証を行って求めた収益価格に基づき、比準価格及び積算価格による検証を行い鑑定評価額を決定する。


イ 民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提とした価格を求める場合

    鑑定評価に際しては、通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提とするものであるため、早期売却による減価が生じないと判断される特段の事情がない限り特定価格として求めなければならない。

この場合は、通常の市場公開期間より短い期間で売却されるという前提で、原則として比準価格と収益価格を関連づけ、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する。
なお、比較可能な事例資料が少ない場合は、通常の方法で正常価格を求めた上で、早期売却に伴う減価を行って鑑定評価額を求めることもできる。

 

ウ 会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、事業の継続を前提とした価格を求める場合

鑑定評価に際しては、上記鑑定評価目的の下で、現状の事業の継続を前提とする価格を求めるものであるため、対象不動産の利用現況を所与とすることにより、前提とする使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。
この場合は、原則として事業経営に基づく純収益のうち不動産に帰属する純収益に基づく収益価格を標準とし、比準価格を比較考量の上、積算価格による検証を行って鑑定評価額を決定する。


Ⅱ 賃料

1.正常賃料
正常賃料とは、正常価格と同一の市場概念の下において新たな賃貸借等の契約において成立するであろう経済価値を表示する適正な賃料(新規賃料)をいう。

2.限定賃料

3.継続賃料
継続賃料とは、不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料をいう。